2023-09-26
日本でのKCON2023が開催されてからだいぶ時間が経ってしまったが、せっかく書いたのでここに共有しておく。
本記事は、私が学生の立場から好きなことを学び私自身の考えを記録するものだ。KCON での体験と、それをきっかけに私なりに考えた KPOP の面白さや課題点、そして私が今後取り組みたいことについてを記す。KCON のレポートというよりも、それを通して私が考えたことについてのメモをまとめたものだ。
私が K-pop にハマったのは高校生の 1 年生の頃。友人たちや私の妹の影響を受けて、完全にその魅力に取り憑かれた。K-POP の中毒性のある曲や、グループごとのユニークなコンセプト、深いストーリーに基づく世界観に、私はすっかり魅了されたのだ。それらを追体験することは、まるでゲームの中に入り込んでいるような感覚で、非常に感動的であった。 当時の私は、「エンタメとテクノロジーを融合させて世界を変革する!」という大きなビジョンを持っていて、K カルチャーの進化と拡大は、私の興味と完璧に一致してた。 現在、私は経済学部で大学生としての日々を送りながら、好きなアイドルを応援するだけでなく、エンタメ業界やテクノロジー業界の最新動向に目を光らせている。
まずKCONとは、韓国の音楽(K-POP)・ビューティー・ファッション・フード・ドラマなどの韓流文化コンテンツが体験できるコンベンションとコンサートが融合された K-Culture フェスティバルのことである。KCON 2023 JAPAN は、2023 年 5 月 12 日から 14 日まで幕張メッセで開催され、私は 1 日目と 2 日目に参加した。
2023 年前半の中で一番衝撃を感じた2日間であった。 K カルチャーの熱気を体感したとともに、アイドルのおもしろさと現状の問題点を改めて実感し、それらを踏まえたアイドルの可能性を私なりに考えることができた。大袈裟であるが、本当に刺激的な 2 日間だった。
避けては通れない話題であることは確かであるため、ここでは軽く触れておく。人によって見方や感じ方が異なるが、少なくとも政治的なレベルでは、2023 年 5 月現在、両国間の対話や協力が進んでいることが伺えるだろう。
私が考える K-Pop アイドルのおもしろさは、コンテンツ全体の質と業界内における競争力の高さ、さらにファンダムと呼ばれる共同体の目的意識の高さにある。
言葉がわからなくても魅力が伝わってしまう。さらに、言葉が違っても音楽やダンスを含めた独自の世界観で[アーティスト ↔ ファン, ファン ↔ ファン]が繋がってしまう。(これって、すごくないですか…?)
一方で、競争力の高さゆえの問題点も多数あることは確かだ。
KCON では、JO1やINI、DXTEEN、NiziU、さらにXGなど、全員日本人&曲も日本語(XG は英語)メインのグループが出演しイベントを盛り上げていた。
韓国で作られた音楽のことなのか、韓国人がつくった音楽なのか、韓国語で歌われる曲なのか、はたまた、韓国人がパフォーマンスする曲のことなのか。K-pop の定義がいまいちわからない。
Netflix BLACKPINK ~ライトアップ・ザ・スカイ~ でも言及されていたように、ぶっちゃけ、”K-Pop”という概念に明確な定義がないようだ。
個人的には、制作における韓国資本が過半数を占めていれば”K-Pop”になると解釈している。あまり正しくない気もするが、JYP が掲げるビジョンの一つに「Globalization by Localization」というものがあるのを踏まえると、あながち間違っていないと考える。
一方で、XGは X-pop という新しいジャンルを提唱している。 こちらにも注目していきたい。 参考:参考記事
K-POP のおもしろさを実感したと同時に、K-pop アイドルについて私はなにも知らないことも思い知らされた。
知らないグループや事務所がたくさんあったし、大変失礼なことに、好きなグループのメンバーの名前も間違えていたことがわかった。아이고!
KCON を通して考えたことなので、以下、アイドルの定義は K-POP アイドルを中心としたものとなる。
アイドルの存在を間近に見て、アイドルという力強いストーリーを持った人間(ハード)との関わりと音楽・ダンス(ソフト)の掛け合わせが人を動かしているのだと思った。
特に最近私がハマっている CSR(첫사랑)を目の前にした時(さらにファンサをもらった瞬間)と、空間を共有するすべての人々と同じ音楽にノッた瞬間に、私は身をもってポジティブな感覚になった。
間違いなく、アイドルは人間が担わなくてはならない重要な役割の一つであると言えるだろう。
LLM をはじめとした生成 AI(人工知能)の発展とともに人間の役割や存在意義が問われるこれからの社会で、人との関わりの中で人生に”おもしろさ”を生み出す人間のアイドルは必要不可欠な存在になると考える。 もちろん、 Mave: をはじめとしたバーチャルアイドルの誕生により、新たな価値が発生するだろう。
さらに、同じ方向に働くポジティブなエネルギーと、共通の目的を持った”ファンダム”(熱心なファン集団)と呼ばれるコミュニティーの存在も重要だ。
さまざまな問題が溢れ少し先の未来を見通すことさえできない現代社会において、人々に生きる希望と意味を与えることができるアイドルとファンダムとの関係(=エンタメを原動力とした社会システムの実現)は、社会をより良いものへと導くことができると妄想している。
個人的にこの”ファンダム”というコミュニティの仕組みに大きな可能性を感じている。 現在のエンタメ産業は、一方的な”消費”で成り立っていると言える。完全に私のイメージであるが、現状の社会において、個人の人生は「仕事は仕事、娯楽は娯楽」と完全に隔てられたレイヤーの上で実行されていて、個人の中で一貫した”生きる意味”や”生きる目的”などの人生における”おもしろさ”を持つことが難しいと考える。その中でも K-Pop 界におけるコミュニティは比較的双方向な関係が成り立っているように思える。私はこのファンダムをより創造的なものに変革させ、社会の理想像(まさにアイドル)をも創り上げる共同体を実現させたいと妄想している。
あげればキリがないが、私が感じる K-Pop アイドルの問題と限界は以下の 3 点である。(※前提条件として、アイドルは所詮ビジネスに過ぎないことを忘れてはいけない。)
近年のアイドル(特に K-pop アイドル)を見ていると、私(20 歳前後)よりも若いアーティストが溢れているように見える。
私はこのアイドル若年化傾向に対して少々疑念を抱いている。
アイドルを運営する側としては、早い段階から才能を発掘し経験を積ませ、長いアイドル生命と技術(文化)の継承による市場拡大を実現させたいののだろう。
ただ、体も人格も形成される大切な時期に、十分な休息も取れず激しいストレスに晒される仕事をしていては、本人の人生・健康そのものへの影響はもちろん、アイドルとしての目的自体をも失う事態に繋がり、本末転倒であるのではないか。
韓国では 2014 年から、大衆文化芸術産業発展法(通称「チャン・ジャヨン法」)という、芸能人が置かれている劣悪な労働環境を改善し、女性芸能人に対する人権侵害防止を目的とした法律が公布されている。そして 2023 年 5 月現在、現行の法律に加え、未成年の芸能人の労働時間の上限を現行の週 40 時間から週 35 時間に引き下げる、未成年の芸能人の夜間労働を禁止する、未成年の芸能人の学校教育を義務付けるなどの規定が盛り込まれた改正案が審議されているそうだ。この改正案に対して、業界からは反発の声も多数あるようだが、このように健全な業界の実現に向けた規制は、業界をリードする企業が自ら率先して世界の模範として取り組むべき事案ではないかと私は考える。
参考:現行の大衆文化芸術産業発展法について
国立国会図書館調査及び立法考査局 (2014 年 2 月).【韓国】大衆文化芸術産業発展法の制定 (2023/05/20 アクセス)
参考:大衆文化芸術産業発展法改正案に関する動向
現状の K-POP アイドルの活動では、売り上げを伸ばしチャート順位を上昇させるために、ファンに何枚もの CD を買わせる取り組みがされている。多くの場合、CD にアーティスト(推し)と交流できる特典会やイベントに参加するための抽選コードが封入されていて、ファンは推しとの時間を手に入れるため、推しを応援するために何枚も CD を積むという光景が見られる。これは、プラスチックごみが増えるため、単純に地球環境に優しくない。そして、ファンに対しても優しくない。推しを応援するために、膨大なお金を払った上、全くもって役に立たないプラスチックゴミが負債として手元に残るからだ。もちろん、推しが活動するグループの CD や特典をコレクションしたい! 推しをチャート 1 位にしたい! という欲求を満たし、幸せになるために CD を購入している人を完全否定しているわけではない。ただ、そのような場合でも長期的にみたら手元に残るのはゴミであり、応援の割に合わないように思えるし、地球環境の側面から見ても資源の無駄使いではないだろうか。
そんな問題に対して、芸能事務所・レーベル各社は対策を講じているようだ。その中でも特に、JO1 や INI、DXTEEN が所属するLAPONE エンタテインメントの取り組みは他の同業と比べて革新的だと思った。2023 年 7 月 24 日にリリースされた JO1’NEWSmile’は、円盤 CD を販売する代わりにグッズとデジタル音源のセットで販売する形式をとっている。しかも、グッズもトイレットペーパーや歯ブラシ、さらにオリジナルのジャム(ファンダム名 JAM…)など日常で使える便利なものばかり。これこそ、エンターテイメント企業が目指すべき形だと思った。ファンとしても、生活に推しが溶け込んでいたらめちゃくちゃ嬉しいだろう。
私が述べる立場にないし、裏には様々な事情があるだろうが、CD という既得権益にしがみついていては、確実に社会は改善しないと言える。
今後の CD は、”グッズとして楽しめる”存在になるべきだろう。
当たり前であるが、アイドルは人を商品としたビジネスである。これは大きな強みありつつ、最大の脆さと言えるだろう。 また、大衆文化は流行り廃りが激しい。今後長期的な目線で見て、K-Pop が世界第一線を走るとは限らない。 過去にあった J-Pop の熱狂のように。
初めて KCON に参加し、K カルチャーの勢いやエンタメの可能性を身近に感じることができた。その一方で、その文化が抱える問題点や私の今後の課題についても深く考えさせられた。
私はまだ学生であり、多くのことを知らない。だからこそ、今回の文章には私の主観が色濃く反映されているかと思う。しかし、この経験やこれからの学びを通じて、社会に何かしらのプラスをもたらせる人間になりたいと心から願っている。
今後の具体的な目標や計画については、適切なタイミングで皆さんとシェアできたらいいなと考えている。
今回の記事は私の感じたことや思ったことを率直に書き綴ったものだ。情報の正確性や表現に関して何か誤りや改善点を見つけたら、ぜひお知らせ願いたい。